ブルーエンジェルスの冬季訓練基地として有名なエルセントロは、例年3月中旬の土曜日に、その年初めてのブルーエンジェルスのショーを行う。 私が航空ショーを見に行った1998年は、記録的なエルニーニョによる大雨の年だった(何せ雨が少ない、と言われるカリフォルニアにて、1997年11月〜1998年4月まで、殆ど雨の記憶しかない)。 本来「天気がよい」という理由でブルーエンジェルスが冬季訓練をしている砂漠地帯のエルセントロでも、この年の航空ショーは朝方から雨が降り続いた。
小雨の中、F-14やF/A-18、ウォーバーズ(大戦機)のフライバイが行われる。 午後になり雨もひどくなった。ブルーエンジェルスが飛ぶ可能性が低く、諦めて帰途に着く人も多い。
ちなみにメキシコから国境を越えて見物に来る人がやたらと目立つ。食べ物の出店もメキシコ料理が多い。ここは国境から本当にすぐのところにある。観客の会話もスペイン語が圧倒的。
ブルーエンジェルスの飛ぶ予定の時間が近づいた。雨は何とかやんだ。ファットアルバートC-130が、暗い曇り空に明るい炎を残しながら得意のJATO離陸を披露する。 ブルーエンジェルスのウォークダウンが始まったとき、本当に奇跡の様に太陽が雲の間からのぞき、ブルーエンジェルスの濃紺の機体を鉛色の雲をバックにライトアップした。「これは行ける!」
太陽が顔を出したのもつかの間、すぐに雲だけの空になった。ローショー(悪天候時のプログラム)が始まる。 かなりの人が帰ってしまったのでエプロン地区に人はまばら。 めげずに白黒で写真を撮る。距離は意外と近い。晴れていれば順光で本当に綺麗な写真になったはずだ。 プログラムを約半分消化したところで、再び雨が降り出し、あっという間に土砂降りになった。 「安全のためパフォーマンスを中止して着陸します」のアナウンス。既に残り少なくなった観客は皆、苦情を言うどころか拍手でブルーエンジェルスに分れを告げて帰途に着いた。 僕は本当に最後まで、着陸してタキシーバックするところまで見届けた。大雨の中でも見事にタイトなタキシングを見せてくれた。
あれから一度もエルセントロには行っていない。撮影に良好な光線状態、外周道路からも撮れる環境など素晴らしらしいが、やはりあの時の雨の憂鬱な雰囲気の思い出と、土曜日のショーだけのために1000kmの道程をドライブすることを考えると、どうしても腰が重くなってしまう。
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ブルーエンジェルスのサポート機、TC-130G "ファットアルバート"がJATO(Jet Assisted Take Off)を見せる。 乾燥した砂漠の基地エルセントロだが、この日は雨の為プロペラから見事にベイパーリングが発生している。
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暗い空をバックに、ほんの一瞬差し込んだ光に機体を輝かせて、ブルーエンジェルスのボスがタキシーアウトする。
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結局ブルーエンジェルスが離陸してすぐに、再び雨になったので白黒で頑張って撮る。 ローショーの為、脚とフックを出した編隊 dirty diamond で水平飛行するブルーエンジェルス。 晴れていれば dirty diamond loop になるところだが、ローショーのお陰で近くを通過するのが見える。
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土砂降りになった雨の中、相変わらずのタイトな編隊のままタキシーして戻ってきた。 アクロチームの演技途中々止を見たのはこの時と、他には岐阜基地でのT-2ブルーインパルスだけだ。 ある意味では貴重な体験。 |