その日、私は出張でイタリアに来ていた。営業マンのアデ○オ氏(一部伏字)の運転するフィアットの助手席に乗り、一般道を爆走していた。 一旦停止の表示のある交差点が近づく。見通しは良い。当然止まらずに突っ切るアデリ○氏。う〜ん、イタリアン。 土地勘が無いのでどこを走っているのか判らないが、車はミラノから西に向かっているらしい。やがて高速の料金所が近づく。 ETC(のような装置)が反応して、ゲートが空き、高速に乗る。 と、携帯電話が鳴る。電話に出る○デリオ氏。「プロントゥ」(もしもし〜) 以降、イタリア語での電話(略してイタ電)なので何を言ってるのか判らないのだが、どうやら製品の価格と納期についての話らしい。 やがて激しい口論が展開される。話に熱中するア○リオ氏(以降、面倒くさいのでA男と略)。 会話は更に過熱し、A男はノーノー(ダメダメ!)を連発、相手もすかさず反論。 両手を宙に振り上げて自分の主張をするA男。ギャー、ハンドルは誰が持っているの? 更に「おれにどうしようというのか?」と両手を広げながら会話するA男。ここは高速道路。た、頼むから運転してくれ〜! こ、これはオペラだ!オペラとはいってもブラウザではない、人が舞台に出てきて大声で歌ってドラマを見せるアレだ。 それほどまでに会話には感情がこめられ、全身で感情が表現されている。A男(とおそらく電話の向こうの人)はオペラを演じているのだ! やがて妥協点に達したのか、「しーしーしー」(はいはいはい)を境にニッコリするA男。電話じゃあ表情見えないって。 10分程の会話には喜怒哀楽の極致が凝縮されていた。 私:「今の電話、販売店?」A男:「お客さんだよ。いつものことだよ。」 ....って、ナニか、アンタは客といつも激情高ぶる会話演じているのか?こんなけんか腰の会話、日本じゃあ(ドイツもアメリカも...)すぐに我々出入り禁止になるぞ...大丈夫か? と思ったが、その後のA男も、他のイタリア人営業も程度の差はあれ電話では客相手だろうと何だろうとこんな感じだったのでイタリアではこれが普通らしい。そういえば街を歩きながら携帯で電話しているイタリア人、皆さん身振り手振りを交えて勢いのある会話をしている。
また、別の出張では営業マン(A男とは別)の都合が付かず、代わりに彼の奥さんがボローニャ空港まで迎えに来てくれた。 カタコトの英語しか話さないイタリアン人妻の車に乗せてもらう。イタリア語は挨拶と数字と、パスタの名前(のごく一部)位しか知らない私。 イタリアン人妻と話す機会なんて滅多にないのに...で、中学1年の教科書レベルの会話が続く。 どうでもいいけど人妻さん、運転しながら、かつ会話しながら人の目をじっと見るのはヤメてください。ハンドルから手を離して身振りを混ぜて会話しないで下さい、一旦停止は止まって下さい、細い道で時速80km出さないで下さい、遅いトラックをアオっても無駄です、車間が90cmしかありませんがブルーエンジェルス超密集編隊ですか? 「子供いるの」と家族の会話に。「はい、はい、いる。4人」と輝かせた目で私をじっと見る奥さん。子沢山ですな。あ、今の赤信号なんですけど....以降、子供の話で目を潤ませながら、そしてその潤んだ目でこちらを見ながら運転を続けるイタリアン奥様。う〜ん、何たる家族愛、何たる命がけの移動....
そう、イタリアのキーワードはオペラ、大ファミリー、全身全霊、命がけの運転...そして、それをそのままアクロ飛行に持ち込んでいるのが、世界一面白いアクロを見せるフレッチェトリコローリなのだった。
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編隊離陸するマッキMB339A型練習機。濃紺にイタリア国旗をアレンジしたシックな塗装や尾翼のロゴは、さすが、デザインの国イタリアを思わせる。 ただし好みかどうかといわれると実はそれ程好きではないが。
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強烈なインパクトのある、10機編隊。 決して規模の大きくないイタリア軍の中にあって、世界最大の、10機体制アクロチームを運用できるというのはスゴい。
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名物の、ロールをうちながらの編隊組み換え。 昔深夜テレビでフレッチェトリコローリ(フィアットG-91を使っていた頃か)を題材にした映画をやっていて、編隊変えの際、何か良いパフォーマンスが無いかパイロットが試行錯誤で研究するのだがなかなか妙案が浮かばず、夜にベッドで女性が位置を変える時に男性パイロットの上をコロリところがりながら移動するのにヒントを得て、次の日のフライトでは内翼機が外翼に移動するときにロールを加えて大成功!といったシーンがあったと記憶している。フィクションだろうが何せイタリア人のことだから実は...ということはあり得る? 国旗のカラースモークは太く、濃くて見事。
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イタリア国旗のカラースモークを引きながら天空を向く10機編隊。 フレッチェトリコローリは、イタリア内外の航空ショーの他、ローマ上空での建国記念日のフライバイも実施する。
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10機編隊が5機、4機とソロ1機に分離。 これまで3回、フレッチェトリコローリのショーを見たが、内1回は雲が低い為にローショーだった。ローショーの場合、垂直系をカットしてしまう(代わりのプログラムを用意しない)ので時間大幅短縮、面白さ半減になってしまう。見るなら晴れだ。
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他のチームと違い、デュアルソロとかシンクロペアという運用はせず、ソロは1機のみ。 従って1対1の交差は存在せず、しかし1機だけのソロは「これでもか」という位過激なマニューバーを見せる。 写真は垂直上昇からテールスライドに持ち込み、リカバリーするところ。スモークの太さと航跡が印象的だった。っていうか、普通、ジェット機でこういうことするか?
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フレッチェトリコローリ名物、編隊同士の交差。
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直線翼の平面形が良く判る、ソロのナイフエッジパス。翼上面の塗装は、T-4ブルーインパルスの翼下面塗装に似ている(フレッチェトリコローリの方が元祖)。
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編隊交差の瞬間に、カラースモークに切り替える。
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ラムシュバック(LOMCOVAK〜チェコ語で飲みすぎ、頭痛)。エクストラとかの、エアロバティック専用機ではお馴染みだが... もはやただ唖然とするばかり。
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下向空中開花の後、9機が交差するところ。
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最後にイタリア国旗を空中に掲揚してご挨拶。 トリコローリが飛ぶまでは芝生に座ってショーを見ていた、大部分がスイス人と思しき観客、何とフレッチェトリコローリが離陸するときになったら全員総立ち。 で、フレッチェトリコローリのショーが終わったとたん、かなりの人がゾロゾロと帰りだしたのはびっくり。スイスの皆さん、トリコローリの面白さを良くわかっていらっしゃる。しかし、ショーの最後には自国のパトロイユスイスが飛ぶのに、見なくていいんですか?非国民!!(←大きなお世話) 。
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おまけ。 以前に使っていた、フィアットG91。これもアクロを見てみたかった。 ドイツのシュパイヤーにある博物館にて。オリジナルの使用機ではなく、恐らく退役したドイツ空軍機を塗装し直したものだろう。まあ、雰囲気だけでも。塗装センスはさすがイタリアだ。こっちの方がマッキより好きかも。 |
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