Watsonville airshow
ワトソンビル航空ショー


日本で行われる航空ショーというと、殆どの場合は自衛隊主催の航空祭/基地祭を指す。
従って「航空」とは言いながら、実際には自衛隊の軍用機のフライバイとデモ飛行が大部分である。
同じ軍用機でも、退役した軍用機、すなわち古い大戦機などは日本では数年に1度あるかないかのイベントで見られるかどうかである。
ところがアメリカは、いわゆるWarbirds(大戦機を指すが最近は朝鮮戦争頃の機体も含める)を至る所の航空ショーで見かける。
実際、アメリカの航空ショーで、現役の軍用機が全く姿を見せなくても、Warbirdsだけは飛ぶ、という事も多い。
逆に、日本のように現役軍用機オンリーという航空ショーはアメリカには無い。
Watsonvilleも現役軍用機の参加は無く、その代わりに大戦機、古典期が本当に信じられない数参加する航空ショーだ。
ムスタングやベアキャット、スティアマンにテキサン、B-25といった「ありきたりの」大戦機は言うに及ばず、本当に名前も判らない、残っているのが不思議な飛行機が多い。
正直、僕は大戦機はともかく、それ以前の航空機は(航空機も?)よく判らないので、機種もなにも判らず「スゴイナー」「よく飛ぶなー」「車輪のサスがゴムヒモだー」「これは本物?レプリカ?」と見ているだけなのだが、この手のものが好きな人は卒倒することだろう。絶対一度は見るべきである。

何故こんなにアメリカには古典機・大戦機が残っていて、日本には無いのか?
日本は戦争に負けた、戦後の航空産業が育たなかった、個人レベルで飛行機を持つのが無理、規制が厳しく奇異な機種の飛行が難しいなど色々理由はあるだろうが、最大の理由は一般の日本人の兵器に対する嫌悪と、過去の技術をゴミ扱いする姿勢ではないだろうか。

アメリカは開拓者が武器を手に切り開いた土地で、武器を持つこと、それを使う事が当たり前の風潮がある。
当然先の大戦を戦い、国土を守り抜き勝利に導いた武器を誇りに思い、それを保存しようと努める。そこに大量殺戮兵器と言う概念は存在せず、末代まで残そうとする。

また、アメリカの町を走ると、本当に古い車が走っている(先のネット経済バブル中にだいぶ数は減ってしまったが)。
お金持ちの趣味でクラシックカーをレストアすることもあるが、実際に生活の為に古い車に乗っている人も多い。初代Zや初代シビック、元祖ビートルなど現在街で見かける車の多くがこのパターンだ。

古いものでも使えるものは使う。そういった姿勢と土壌が結果として大戦機を生き残させる。
対する日本はどうか?「改良」「改善」を重ねて世界最高の品質の車を作れるものの、日本で車に乗る時、「車検」の壁があり同じ車に10年以上乗るのは難しい。
家電も次々と新しい機能のものが出て来て、「買い替え」が一種の脅迫観念として付いて回る。結果、粗大ゴミが増える。
(アメリカでは、古くなったけどまだ使える家具、家電は家の前の道端に置いておくと、必ずだれかが持っていって使ってくれる)

こういった、新しいものだけに目を向けて、古い技術、まだ使えるものを無視する姿勢が、結局日本に古い飛行機を残させなかったのではないか。(でも私は一向に改良されない旧態依然としたアメ車に乗る気は無いが....)

一度だけ日本が飛べる大戦機を手にした事があった。プレーンズオブフェーム博物館が復元した4式戦闘機「疾風」である。しかし、結局ご存知のとおり「日本の手に渡ったが為に」飛行不能な状態になってしまった。
その後、同博物館が復元したゼロ戦は、日本に売却されなかった為に現在も飛べる状態で健在だ。
実はゼロ戦も日本が売却交渉を試みたが「日本人は飛行機を大切にしない。疾風を飛べなくした」と即座に断られたらしい。正解である。

ワトソンビルに大量に展示されている60歳前後の多くの機体を見るたび、このようなことを考えてしまう。

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この手の、古い民間機に関しては全く知識が無い。ワトソンビルにはこういった機体が本当に信じられないほど沢山集まる。100機は下らないだろう。でも僕はこういうのは全然判らない。「猫に小判」「豚に真珠」とはまさにこのことだ。
レジNC34939はInterstate S-1 Cadet。
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これもレジNC8616を頼りに必死に調べました。
1929年製のConsolidated Fleetです。
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Steaman 4E型、NC663K
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1929年に製造されたというカーチスライトのトラベルエア4000型。
サンフランシスコのクリシーフィールドをベースとしていたPacific Air Transport の郵便輸送機の塗装が美しい。
民間レジはNC8877
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オーストラリア海軍の塗装をまとったシーフューリー。FB Mk.11"Southern Cross" WH587 / N260X
リノ・エアレース出場をはじめ、各地の航空ショーに積極的に参加しており、最も良く見かける機体の一つだ。
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フライバイするB-17G型、シリアルナンバー44-85740/民間レジ N5017N「アルミニューム・オーバーキャスト」"Aluminium Overcast"
名前とは裏腹に、機体は防食の為銀塗装仕上げ。
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P-51はそれこそ「星の数程」飛んでいるが(実際には150機程らしい)、殆どはD型かそれ以降で、初期のA〜C型となると大変貴重。
本機はシリアルナンバー43-6006、民間レジ N51Z のP-51A-1NA「ポーラベア」Polar Bear(白熊)
並んで飛ぶのはシリアルナンバー44-72483、民間レジN151DM、P-51D-20NA型「リッジランナー3世」Ridge Runner III
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2002年のショーにお目見えした、AC-47 ガンシップ。
米軍用に製造されたC-47が戦後DC-3に改修され、これを入手して7.62mmミニガンの複製を作り、AC-47のレプリカを作り上げたという壮大な改造機。1回200ドルで20分程の遊覧飛行を募集していた。
AC-47はベトナム戦争に使われ、Spooky 及び Puff The Magic Dragon (又は単にPuff)の愛称を持つ。
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メッサーシュミットBf-108 タイフーン。
垂直尾翼や主輪など所々に名機Bf-109と似ている箇所がある。
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バラバラの方向を向いたショーコプターズ(ロビンソンR22)がエディ・アンドレイニの複葉機(ステアマン)と並んで飛行する。
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ウィングウォーカーを乗せたエディのスティアマンのデモ。
寒流の海に近いロケーションの為、霧に包まれる事も多いワトソンビル。
この日は幸い飛行に影響無かったが、後方に発生した霧のため、まるで雲海上を飛んでいる様に見える。
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「オットー」と名付けられたユーモラスな、ヨーヨーをするヘリ。機種はヒューズ269系へり、シュワイツァー300。
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西海岸を代表するアクロパイロットの一人、ウェイン・ハンドレーが Raven による背面リボンカットを見せる。
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エクストラ300×5機でのシャープでスピーディな演技を見せる、ノーザンライツ。
スノーバーズのOBも参加しており、民間チームの中では最高の演技を見せる。
この後エクストラと合わせてジェット練習機L-39アルバトロスも導入したが、このL-39を操縦していたチームのメインスポンサーが墜落死してしまい、チームも解散してしまったのは非常に残念。
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「絶対学校に遅刻しない」うたい文句の、ジェットエンジン付スクールバスがアフターバーナーをふかす。
この後滑走路上を飛ぶ飛行機とのレースに挑む。車の方が勝つのはいつものお約束。
米国のエアショーではこの様なジェットエンジン付改造車は定番。他にレーシングカー、トラックなどもある
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金曜日の夜にはナイトショーが行われている。
三脚を立て、アクロバット飛行する飛行機の航跡を、青さの残った空と共に焼きこむ。
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気球のグローアップショー。


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