コリングス財団とは:
米国マサチューセッツ州に本拠地を置く、非営利団体で1979年に設立。
歴史的航空機をレストアし、飛行可能・不能共に保有している。
ここで紹介するB-17G、B-24Jの他に、1909年式ブレリオ、フォッカーDr1(レプリカ)、PT-17ステアマン、T-6テキサン、TBMアベンジャー、Fi-156シュトルヒ、UC-78、B-25ミッチェル、F-4Dファントム(!)が現在飛行可能な保有機。
残念ながらこれらはホームベース近隣の航空ショーにしか参加せず、必然的にカリフォルニアで見る機会は殆ど無い。
しかしB-17,B-24は例外で、例年冬のフロリダ州からスタートし、南部沿いにテキサス州、アリゾナ州と西に移動しながら各飛行場を訪問、5月頃にカリフォルニアに飛来して、その後初夏には北西部のワシントン州から東へ移動、東海岸沿いに南下して年末にはフロイダに戻るという壮大なアメリカ大陸制覇ツアーを行っている。
訪問先の飛行場では、有料で機内を公開したり、体験搭乗を募ったりすることにより機体の維持費と移動費を稼いでいる。まさに「旅芸人」だ。
ちなみに各機とも、1時間の飛行あたり$2000の費用がかかるという。これが安いか高いか....
航空ショーに合わせて飛来して公開される事もあるが、多くの場合は地方の小さな空港に降り立ち、地元の人と触れ合うイベントになっている。
B-17G "Nine o Nine"
本機は民間レジN93012で、元々は44-8357としてヨーロッパ終戦間際の1945年4月製造。このため実戦で使われる事はなかった。
救難機、輸送機、核爆弾被爆試験、山林火災消火機等を経て1986年にコリングス財団の手に渡り大戦中の爆撃機の形態にレストアされた。
1987年に着陸事故で大破したものの修理・復活して今日に至る。
機体塗装は ヨーロッパで活躍した、アメリカ陸軍航空隊 第91爆撃隊 323飛行隊に所属する実機のもの。
B-24J "All American" "Dragon and his tail"
生産数はB-17よりも多いB-24であるが、現在もアメリカ、ヨーロッパで多数が飛んでいるB-17とは対照的に、飛行可能なB-24は本機だけである(尚、コンフェデレートエアフォースが輸送型のLB-50を保有している)。
本機は民間レジN224J、シリアルナンバー44-44052で1944年8月製造。
アメリカ陸軍航空隊に引き渡されたものの、間もなく英空軍に移転、太平洋戦線で対船舶攻撃、爆撃や補給任務に使われた。
終戦に伴いインドにて破棄されたがインド空軍は1948年に本機を含む36機のB-24を再生して使用。
1968年に再び放棄されたが1981年に英国のコレクターに回収され、後にコリングス財団が購入して飛行可能状態にレストアされた。
最初の塗装の"All American"はアメリカ陸軍航空隊の15空軍の機体の名に由来している。
1998年には塗り直されて、アメリカ陸軍航空隊 第91爆撃隊 323飛行隊の有名な"Dragon and his tail"のノーズアート(胴体アート?)が描かれた。
その1 1997年5月サンノゼ国際空港
サンノゼ空港は自宅から会社までの通勤の途中にある。
B-17とB-24が飛来したのは平日だったが早朝から公開されていたので早起きして出勤前に見学する。
早速入場料を払ってB-24の機内を見る。
残念ながら入れるのは爆弾槽よりも後ろだけで、操縦席を含む前方は見られなかった。
これは飛行中に後部胴体下部にせり出し、着陸時は収納するボールターレット(回転銃座)を内側から見た所。
側面機銃手の、大きな窓からの眺め。弾丸はダミーだが機銃は勿論本物。
かれこれ60年前、ここで機銃を構えていた搭乗員は何を考え、何を見たのだろうか。
爆弾槽を外から覗き込む。
爆弾槽扉はシャッター(お店の)形式。
こちらはB-17のコクピット。
胴体上部の機銃手席を見上げる。
爆弾槽を内側から見る。
胴体前部と後部を結ぶ中央の通路はとても狭い。
図体のデカいアメリカ人には通り抜けがキツそう。
機外から爆弾槽を覗き込む。後方胴体下には球形のボールターレット(回転銃座)。
しゃがみこむ様に銃座に入り、後ろから扉を閉めるのだが無茶苦茶狭いので小柄な搭乗員が選ばれる。
一見危険そうだが後ろの扉が防弾板を兼ねている事もあり実は生存率が一番高いポジション。
その2 1997年5月 サクラメント郊外マクレラン飛行場
サンノゼを飛び立ったB-17とB-24が次に目指したのはサクラメント郊外のマクラレン飛行場。
サクラメントはカリフォルニアの州都。州議事堂は立派だが街自体はさほど大きくはない。
郊外のマクレランは、かつての空軍基地だが現在は民間の小規模な飛行場。
体験搭乗に向けタキシー開始するB-24 リビレーター。
腹ばいになってローアングルで撮影した為、低い胴体位置が良く判る。
お見事!なフォトパス。
アメリカの航空ショーなどで飛ぶパイロットは、どのような飛び方をすれば観客にとって見栄えするのかとても良く心得ている。
この角度からは2枚の垂直尾翼の大きさが目立つ。
優等生的なB-17や、無機質に感じるB-29に比べ、どことなく野暮ったいB-24は親しみの持てるスタイルだ。
こちらは体験搭乗に向けタキシーアウトするB-17 フライングフォートレス。
B-17も負けじと背中を見せてパス。
ちょっと距離が遠いのが残念。
現代のB747等もそうだが、4発機のタキシングは撮影しにくい。
エンジン4発を入れて前方から撮ると間延びしてしまう。画面一杯に機種アップを狙うと、どうしても両端のエンジンがカットされて双発機にしか見えなくなってしまう。折角エンジンが4つも付いているのに......
飛行を終えてエプロンに戻る頃には日が傾き、ノーズアートと出撃マークの黄色が鮮やかに染まる。
夏時間の為日暮れは遅い。
この写真は午後8時過ぎの撮影。
黄昏に「空飛ぶ要塞」のシルエットが映える。
その3 1997年5月ペタルマ飛行場
ペタルマはサンフランシスコの北に位置し、周りは牧畜やワイン用葡萄の栽培が盛ん。
有名なナパバレーにも近い。
会社の同僚で海軍出身のミリタリーオタクに誘われて見に行く事にする。
前日より古典期愛好家による会合が開かれていた為、ペタルマには何機かのWarbirdsが見られた。
これはその内の一機、ソ連の練習機を中国で国産化した 南昌初級6 (Nanchang CJ-6A, N911YK)。
T-6などの値段高騰に伴い、安く入手出来る同機の人気が上がった。いずれリノでCJ-6クラスのレース、何て出来るんじゃないだろうか。
B-17は護衛付で登場。ニクイ演出だ。
ちょっと曇り気味で残念だけど、同僚と「イギリスの前線基地みたいでいい雰囲気だ」と話していた。
二人ともイギリスに言った事が無いのは言うまでもない.。
続いてB-24の登場。
胴体には大口寄付をしたスポンサーの名前がお経の様にビッシリと書かれている。
タキシーするB-24。
胴体右側のノーズアートはスポンサーのビール会社の広告らしい。
その4 1999年5月 サンノゼ国際空港
サンノゼでB-17,24を見るのは1997年に次いで2年ぶり。実は1998年にも飛来していたのだが時間の都合が付かなかったりして見に行かなかった。
この頃の米国はまさに好景気の真っ只中。航空会社も増える乗客に対応する為チケットレストラベル、インターネット予約特典、自動チェックイン機などを次々に導入していた。
サンノゼ空港も増えるトラフィックと乗客に対応する為新滑走路の計画、駐車場の移転拡張などに乗り出した頃で、セスナ等の一般航空機の締め出しまで議論された。
こうした事情の為か、B-17とB-24がサンノゼを訪れたのは1999年が最後になってしまった。
結局2001年9月に新滑走路が完成したのだが直後に同時多発テロ事件発生して各航空会社は大幅に減便、拡充した駐車場も最近はガラガラだ。
胴体右側は塗りなおされ、実在した数あるノーズアートの中でも群を抜いて派手なDragon and his tailが復元された。
無塗装や派手なノーズアートは戦勝への余裕の証。
その後朝鮮戦争でもアメリカ空軍機には派手な塗装が多く見られたが、ベトナム戦争を境に地味になってしまった。
アメリカ海軍機もやがてロービシ塗装になりかつての派手な塗装の面影が無くなってしまった。
最近のヒットはやはり厚木のChippy Ho!か。
R/W36Lの離陸に向けタキシーするB-24.
胴体一面に描かれた竜の、尻尾の部分が見える。
早朝に体験搭乗の為R/W36Lを離陸するB-17。
今ならR/W36Rが完成しているのでもっと大きく写せるのだが....
こちらも朝早く起きて、駐車場屋上から撮影に挑む。
ヨーロッパの旅行者らしき人がやってきて、貨物機駐機場を指しながら「BAXのDC-8は何時離陸するの」と聞いてきた。残念だけどこれの離陸は夕方遅く。どうやらB-17、B-24には興味が無い人みたいだ。
体験搭乗を終えて着陸するB-17。
午前中は撮影ポイントが少なくてちょっと苦労する。
右側面はノーズアートが無くちょっとつまらない。
その5 2002年6月 モフェット連邦飛行場
4年振りの再会。フライトの数も多く、撮影チャンスが多いのが嬉しかった。
ファイナルアプローチ中のB-24。
日曜日の撮影で、この日はP-51ムスタング、P-3Cオライオン、C-130ハーキュリーズなどが飛んでいて収穫が多かった。
巨大な建物は飛行船の格納庫。
モフェットと言えばなんと言ってもこれです
世界最大の航空機、アントノフAn-124は隣接するロッキード・マーチンからの人工衛星を運ぶ。
クロカン訓練なのか、土曜日にはF/A-18Eスーパーホーネット(NK-203)が居た。とりあえずB-24とB-17はそっちのけで撮影。でもE型って、余りカッコ良くない。
この後タキシーして離陸。